ただメイナード様のお側にいられるなら、それで十分なのです
「メイナード様を、あなたにあげるわ」
フィリアは姉の言葉に驚いた。彼は聖女である姉の婚約者のはずなのに。
姉中心のこの家ではフィリアに拒否権はない。けれど秘かに彼を慕っていたフィリアは、自らも望んで彼の元へ。そこには英雄と呼ばれ、美しい顔立ちをしていたかつての彼はいなかった。
首元に黒い痣のような呪いが浮かぶ衰弱したメイナードは「僕には君にあげられるものはないんだ」と心配する。
「絶対に、メイナード様を助ける方法を探し出すわ」
解呪の方法を探すフィリアは、その黒い痣に文字が浮かんでいると気づいて……?